お花とあきらめた部活と体験格差
昨日、実に3年ぶりにお正月のお花を生けました。
生け花は大好き。たまーにしかできないけれど、スマホもいじらず、他ごとも考えず、ただ目の前の花をどう生けるかに集中する。
一つひとつの花や枝、葉、実をよく観察してイメージをふくらませる。
近くから、遠くから、あるいはぐるりと回って360度から、個と集を行き来する。
だんだん集中力が増してきて、リズムが出てくる。イメージをどんどん膨らませて足したり引いたり。時に先生やほかの人と一緒にながめたり。いろんな流派ややり方があるけれど、基本自由に楽しもうという感じで気楽に。
あっという間の1時間。
今回のお正月のお花はこちら。
ふわっと華やかで愛らしい花
ポロンと踊るように広がる葉
凛と伸びて胸がしゃんとする枝
楽しそうで
元気がでる感じに仕上がりました。
途中、どうなるのかな?うまく仕上がるかな?と不安になるのですが、あぁでもないこうでもないと試行錯誤を繰り返し、あとは自分の直感を信じてみる。
個性爆発系のお花となりました。
あぁー、気持ちよかった!
なんて清々しく心地の良い時間なんだろう!
心もほくほく。よかったよかった。
さぁ、今年も残りわずか。この後も、ももに戻って頑張ろう!と意気揚々と車に乗り込みました。
車を運転しながら頭に浮かぶのは、大好きな生け花にふれると必ず思い出すほろ苦い経験。
大学生の時、華道部に入って活動していました。バスでキャンパスを行き来して週に1回のお稽古に通う。花材は毎回お花屋さんに取りにいく。お稽古が終わって、元のキャンパスに戻り帰宅する頃には22時を回ることもあったけど、とっても楽しくて大好きな時間でした。
でも、部活がある日はアルバイトに行けず、展示会や文化祭の前後は準備で週の半分以上を部活にかける必要がありました。
文化祭も実行委員をするぐらい楽しくてやりがいもあって、何より他の部活の先輩や同級生たちと制作物を作ったりイベントの司会をしたりするのがとっても楽しかったのを覚えています。
本当は4年間続けたかったけど、実際に所属できたのは1年ほどでした。
華道部では花材などの材料費が毎月必要になることや、展示会や合宿では別途費用が必要になります。
部活をしていると、アルバイトに入ることができる頻度も減り、一人暮らしをしながらアルバイトでやりくりしていた私は困ることが多くなりました。
その事情を先輩に相談すると、実は年間で10万円以上の諸費用が必要だということがわかりました。このままでは生活が成り立たなくなってしまうということで、退部することになりました。
先輩からは親に頼んでお金どうにかできないかな?と言われたり、黙ってたらお金持ちのお嬢さんに見えるのになと言われたり。ショックなこともありました。
華道部の友人の話を聞いていると育った環境も通ってきた学校も、家族での過ごし方も何もかも違っていて、自分だけ取り残されてポツンとたたずんでいるようでした。
部活をやめることになったと親に話したとき、華道部はお金持ちしか続けられない部活だったみたいとつぶやきました。それを聞いた親はとても辛そうでした。余計な一言を言ってしまったと思いましたが、気持ちが荒んでしまっていたのだと思います。
部活をやめた後、アルバイトを増やして掛け持ちし、朝は始業前にファストフード店で、夜は塾でバイトばかりの日々でした。
リーマンショックの時期で、元々経済的に不安定な我が家も例に漏れず家計はピンチに。学費が払えず、分納に延納の手続きを繰り返し、どうにかギリギリ卒業することができました。
同じように分納や延納の手続きをするために学生課で顔を合わせていた友人は経済的な理由で退学し働いていました。
部活やゼミ合宿などプラスアルファで費用が必要なものには参加できないこともありましたが、私は大学に通い続けることができること自体、とても有難いことだと思いあきらめていました。
同級生が部活を4年間継続し、その間に経験したこと。
私はアルバイトに必死で、毎月の家賃や学費、食費もギリギリ、なんども退学の危機が訪れては泣きながら学生課の職員さんに相談に行ったこと。もちろん友達には話せない。
悔やんでいるつもりはなかったけれど、思い出すとまだ心にささくれが残っているのかなと感じます。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000082214.html
先日、公益社団法人チャンスフォーチルドレンから発表されたこどもの体験格差についての調査です。
結果①:経済的に厳しい家庭の子どもの約3人に1人が、学校外の体験機会が何もない(=体験の貧困)
結果②:物価高騰により、特に経済的困難を抱える家庭で子どもの体験機会が減少している
結果③:現在の経済状況が厳しい保護者ほど自身が小学生だった頃の体験機会が少ない
ということが調査により明らかになりました。
"子どもの「体験活動」は、子どもの学習意欲や主体性などの社会情動的スキルに影響をもたらすとされ、文部科学省でも重要な教育政策として推進されています。"
こどもだった当時は、親は精一杯頑張ってくれているのだから贅沢やわがままを言ってはいけない、と思っていたし、そう思うことで自分を納得させていたのかなと思います。
今、私たちまなびやももが取り組んでいることは、どのような背景に生まれ育つこども若者も豊かな社会資源につながることができるようになることを目指しています。
不登校を中心にひとり親、発達障害、精神疾患や経済的困窮、ヤングケアラーや外国ルーツなど多様なこどもたちが集い居場所を利用しています。
居場所のなかでスポーツや音楽、創作活動をしたり、美術館や遠足に行ったりしています。大学のゼミのように定期的に集まり近況報告をしたり文化祭に向けた話し合いをしたりする文化芸術ゼミも開いています。
困難な状況により生じる不利益や体験活動、文化的活動の機会の減少を、こどもたちが仕方がないとあきらめなくていいように、親が自分のことを責めなくてもいいように、私たちにできることはまだまだあります。2023年も前進できるように頑張っていきます!
えりこ
まなびやもも(一般社団法人もも)
こどもたちに多様な体験を届ける活動を応援してくださる大人が一人でも増えるとうれしいですし、大変励みになります。
https://manabiya-momo.jimdofree.com/
ボランティアやご寄付での支援ができます。
こども若者を支える仲間を募集しています。
ぜひよろしくお願いいたします。